株式会社エヴァーズ(大分県大分市)
IT導入補助金2021 A類型
株式会社エヴァーズは、2008年に暖簾分けの形で株式会社ニッセンから独立したブライダル関連企業です。事業の根幹は貸衣装ですが、新作ドレスのファッションショーや海外ウエディングの斡旋、各種挙式のプランニング、お二人にぴったりのウエディングスタイルを見つける式場体験バスツアーなど、お客様の夢を叶えるためにさまざまな事業を展開しており、大分県内でシェア40%を獲得する地域一番店となっています。
設立当時から独自の貸衣装管理システムを導入していましたが、衣装レンタルのみの管理で、付随するアクセサリーや物販等はエクセル等で別管理して月ごとに集計し直さなければならないといった不便さがありました。またオフライン管理であることも不自由で、データが分散しているため関連付けや分析が難しいといった問題もありました。さらにシステム提供元の高齢化により数年後にメンテナンスが困難になることが予測されたことも新システムの導入に踏み切った理由であります。
「COPORO」は、貸衣装のご試着や仮押さえといった業界特有の煩雑なスケジュール管理や商品管理業務に対応する貸衣裳管理システムです。一元管理とともにきめ細かな管理も行えます。例えば衣装の着用写真や会話のメモといった接客記録も顧客情報として管理することができたり、ご親族まで含めてグループ登録しご婚礼から七五三、成人式といった家族のライフイベントに合わせて親身なお声かけができる点などにとても魅力を感じました。
補助金申請は不慣れでしたが、「接客現場で即時かつ正確にデータ入力を行うことで接客後に行う作業を減らし、勤務時間の短縮、作業ミスの防止、迅速なデータ集計を実現したい」「新規顧客の開拓やデータ分析にもITツールを活用して経営強化したい」といった導入目的が明確だったため、スムーズに書類作成することができました。
導入後に苦労したのはデータ移行です。顧客情報を含む既存データをすべて打ち込み直さねばならなかったため、IT支援事業者のサポートを受けながらなんとか作業を終えました。大変でしたが、この機に自社に必要なデータを精査し、業務フローを調整したことは、今後の事業展開に役立つと感じています。ドレスや小物、アクセサリーなど1万点以上に及ぶアイテムの1つひとつにバーコードをつけてシステムに登録していく作業もお客様が少ないコロナ禍だからこそできたことで、逆境を逆手にとり、前向きな投資としてIT導入にチャレンジしたことは、コロナ禍で不安を感じていた社員を奮い立たせた面もあったと思います。
これまで手書きだった衣装台帳のシステム管理が可能となり、顧客情報はもちろん接客から受注、結婚式場のスタイリング、ご請求金額まで一元管理できるようになりました。活用できていなかったiPadと新システムの連携も実現し、接客時に撮影した着用写真を婚礼時に美容師に渡すスタイリングシートに反映させる仕組みを構築するなど業務の効率化が進んでいます。衣装レンタルの空き状況もシステムで検索可能になり、1件30〜40分ほどかかっていた接客資料の作成は約10分に短縮。業務のオンライン処理が可能になり、効率化したことで残業時間は導入前の約10分の1まで削減し、賞与に反映することで従業員の意欲向上につなげました。
弊社は女性が働きやすい環境づくりを最優先に考えており、IT化により生まれた時間的な余裕は、出産・育児休暇の人手不足をカバーしたり、小さなお子さんが急に熱を出したようなときにまわりが快くサポートして家族を優先できるような社内体制の構築に繋げています。出産等でやむなく仕事を諦めた女性が弊社に再就職を希望するケースも増えており、経験や知見のある優秀な人材を確保するという点でも業務のIT化を進めることは有効だと感じています。
従業員からは、「来店スケジュールと顧客の詳細、スタッフのスケジュールが同じ画面で見られるようになって便利。ダブルブッキングがなくなった」「顧客情報から来店履歴や次回の予約がわかり、接客時の申し送りも確認できるため、きめ細やかな接客ができるようになった」「予約時に間違いなく顧客情報を登録をしておけば、スタイリストシートや請求書などすべてに共有されるため、お名前のミスや漢字の打ち間違いが減った」といった声があがっています。毎日の売上げデータが即時確認でき、人気ドレスの傾向も細かく把握できるため、ドレスメーカーとの商談や接客時のおすすめにも役立っています。
2023年10月のインボイス制度の導入に伴い、再度、IT導入補助金を活用して会計ソフトのバージョンアップを図りたいと考えています。「COPORO」に関しても、現状はまだ十分使いこなせていないため、スタイリストシートと同じ仕組みを写真スタジオにも展開するなど、さらに効率化を進めます。
若者世代の人口減少やコロナ禍によりウエディング業界は様変わりし、結婚式が減ったことで地域産業も打撃を受けています。1つの結婚式には式場や写真館のほか、豊後牛や地場野菜といった高級食材の生産者など100社くらいが関連しており、とても裾野が広い産業なのです。結婚式を復活させることで地域を活性化させたいという思いから、当社は地場関連各社と共に手をつなぎ県に相談させて頂き、大分県では全国でも珍しい「新型コロナ対応ウエディング支援金」が実現しました。
時代が変わっても、幸せな門出を祝う気持ちは変わりません。アットホームなレストランウエディングなどお気持ちに寄り添う多彩な挙式プロデュースに力を入れ、地元のお客様に喜んでいただきながら、地域社会に貢献できる企業であり続けたいと思います。
厳しい状況の中で、多くの中小企業は設備投資に二の足を踏む思いがあるのではないでしょうか。私たちも導入を決意した直後にコロナ禍が発生し、一度は計画が頓挫しました。2021年になって売上げは復活の兆しを見せたものの、まだコスト面では不安を感じていましたが、取引銀行や税理士からIT導入補助金の活用をすすめられ、導入に踏み切ることができました。
自転車の乗り方を覚えるときに最初は補助輪をつけますが、IT導入補助金は業務のIT化における補助輪のようなものです。これからの時代、業務の効率化や人材不足への対策はもちろん、事務ミスによるトラブル防止等のリスク管理の面からもITの推進は必要不可欠なものです。せっかく国が事業者の挑戦を補助してくれる制度があるのですから、積極的に申請して大切に使っていってほしいと思います。
会社名 | 株式会社エヴァーズ |
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URL | https://www.evers.jp |
住所 | 大分県大分市王子町32番 |
従業員数 | 45名(2021年) |
事業内容 | 婚礼貸衣装業、結婚式場斡旋、写真スタジオ、その他ブライダル関連事業 |
従業員数 | 45名(2021年) |