コミタクモビリティサービス株式会社
(岐阜県多治見市)
IT導入補助金2021 C類型-1
岐阜県多治見市を拠点とするコミタクモビリティサービス株式会社は、地域の乗合バス事業と学校や企業の送迎バス事業を展開しています。交通弱者に対応する地域コミュニティバスの運行をいち早く始め、2009年には「ソーシャルビジネス55選」に選出されました。「すべてはお客様のありがとうのために」をコンセプトに、地域の皆さまの足となるべく安心安全を追求しながら、時代に即した交通手段の創出に努めています。
乗合バス業務を手掛ける一方で、地域の高校や大学、そして大手通販企業の送迎バス事業もスタートしました。順調に売上を伸ばしていたところに、コロナ禍の感染症対策で「乗車率を50%以下」という制限が課されたのです。バス車両もドライバーも足りず大変困難な状況ではありましたが、お取引先様の信頼を獲得するために社員一丸となって取り組んできました。
この新規事業によって経営基盤が整ってきた時、次なる課題として浮上してきたのは、多忙を極める管理スタッフの仕事を効率化するために運行管理業務をDX化することでした。日々の「運行指示書」や「運行日報」などの書類は、全て管理スタッフやドライバーによる手書きで、バスの帰着後に管理スタッフが2、3時間かけて「運行実績」を手作業で入力するという膨大な業務が発生していたのです。
また、1日あたり約80便分の運行指示書や約30枚の運行日報、そのほか点呼簿などさまざまな書類の量は、月に3000枚以上にも及び、オフィスを占める書類のペーパーレス化も大きな課題でした。
そこで、兼ねてから経営勉強会でつきあいのあった地元のシステム開発会社、顧問会計士や社労士にも相談しながら、送迎バスの運行管理支援システムの導入を本格的に検討し始めたのです。
検討の結果、IT導入補助金を活用して導入したのは、株式会社チームゼット様が提供する「バス運行管理支援システムZ on kintone 連携型」でした。
今回、導入の決め手となったポイントは3つありました。1点目はアナログで行っていた業務を全てDX化できること、2点目はデータをクラウドで一元管理できること、そして3点目は運行中に何かトラブルがあった場合、GPS機能ですぐに通知できることでした。大手企業の送迎バスでは1日に約80便ものバスで従業員様を送迎しますから、安全にお送りすることが使命であると同時に、遅延などがあった場合は即座に報告することが義務づけられています。
また、IT導入支援事業者からIT導入補助金についての案内もあり、補助金の力を借りて導入することを決断したのです。申請から導入までは不安なことも多かったですが、IT導入支援者のサポートがあったので大変心強かったです。
実際にシステムを導入して運用を開始するまでには、システムやタブレット、ネット回線の選定、フリーSIMでの試験走行など前準備が大変でした。ドライバーは高齢者が多く、だれでもわかりやすいルールづくりやマニュアル作成なども苦労しました。何度も検証を重ねて、マニュアルを修正し説明会を繰り返し、半年ほど準備に時間をかけて2022年8月から全面的に運用をスタートしたのです。
高齢のドライバーの方々にはなかなか浸透しないのではないかと心配していましたが、予想以上に運用が進み、現在8割ほど実用化が完了しています。
システムの導入によって、運行管理業務は激的に効率化しました。これまで専任スタッフが手作業で行っていた運行ルート作成も簡単にできる上、1日約80便分の運行指示書は自動的に各ドライバーのタブレットに表示され、手書きは不要となりました。またドライバーが手書きしていた運行日報も運転席でのタブレット操作が可能となり、さらにはクラウド上で自動的に運行実績が反映されるため、バス帰着後に2、3時間かかっていた入力作業もなくなりました。そして毎月の月次報告も自動で反映されるため、入力に30分かかっていた作業が、わずか2、3分で出力できるようになりました。
一方でペーパーレス化も達成しました。運行指示書や点呼簿はタブレット上に表示されるため、出力してドライバーに渡す必要はありません。1日30枚ほどあった運行日報もゼロとなりました。月間トータルで約3000枚もあった書類を削減することができたのです。さらには時期を同じくして勤怠管理システムも導入し、CSVでデータを吐き出して運行管理システムに読み込むことで日報と連動することも実現できました。
正直まだまだ改善したい部分は多いものの、複雑な管理業務を激的に効率化することができたのは大きな成果です。DX化は、管理スタッフにとって「煩雑な日常業務からの解放」に直結すると考えます。効率化で生まれたゆとり時間を活用して、安全対策や営業戦略といった本来の仕事に力を注いでもらいたいですね。そしてさらに視野を広げ、本人のスキル向上につながる勉強会への参加など、ステージアップを目指してほしいと願っています。結果として売上アップにつなげていきたいと考えています。
そして今後は送迎バス事業を基盤としながらも、地域の皆さんの足として、タクシーとは違う新たな公共交通機関、コミュニティバスサービスにもますます力を注いでまいります。現在試運転中のAIによる配車システム搭載のコミュニティバスを、多治見市全域に広げていきたいですね。
DX化を進めるにあたっては、自社に今必要なことは何か、業務において効率化できることは何か、をしっかり把握しないといくら高額で立派なシステムを導入しても根本的な問題解決にはつながらないのではないでしょうか。まずは自社の実状をきちんと理解し、小さくても自社のニーズや規模に合ったツールを選ぶことからスタートしてみてください。
もちろん経営者自らが学び続けることも大切です。管理クラスの従業員が何をしているのか、現場で何をしているかを直接しっかり見極めること、気づきはそこから得られます。IT導入補助金のホームページで、多様な業種の企業様の導入事例に学ぶことができるのも、そんな気づきの場のひとつと考えます。世の中は日々進化し続けていますから、常にアンテナを張って勉強していくことが大事だと感じています。
会社名 | コミタクモビリティサービス株式会社 |
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URL | http://www.comitaku.com/ |
住所 | 〒507-0074 岐阜県多治見市大原町5丁目99番地3 |
従業員数 | 92名 |
事業内容 | 一般乗用旅客自動車運送事業、一般貸切、乗合、特定旅客自動車運送事業 |
従業員数 | 92名 |