生産・仕入れ、販売、在庫管理をIT化し経営を適正化
削減したコストを広告費に転換して売上もアップ!

株式会社アズマ(埼玉県さいたま市)
IT導入補助金2021 C類型-2

クラウド型基幹業務システムの導入で、経営状況を正確に把握
業務の効率化によって、労働環境も改善

<抱えていたお悩み>
旧態依然とした社内業務を改め、
生産・仕入れ、在庫、物流を正確に把握したい

弊社は、1978年に創業したファブレス*1の家電メーカーです。創業時は家電の二次卸業を営んでいましたが、現在は大手ディスカウントストア等のPB製品開発のほか、自社ブランドの家電開発にも着手し、2019年からはECサイトで直販も行っています。

しかし、経理等の社内業務は旧態依然としており、販売管理は紙の台帳に記された売上表を見ながら個人が電卓を叩いて計算しているような状況でした。それでも大きな問題はなかったのですが、検算等に手間がかかる上に細かなミスが多く、正確に売上げや利益を把握するのに時間がかかっていたことは事実です。以前から付き合いのあったIT導入支援事業者(株式会社大塚商会)から販売管理ソフトや会計ソフト導入の提案があったのですが、長年のやり方を変えることに不安があり、なかなか踏み切ることができませんでした。

とはいえ、事業拡大していく上で、果たしてこれで良いのだろうか。そんな思いから2021年にIT経営簡易診断*2を受けたところ、やはり「会計ソフトがない企業は初めて」と驚かれ、IT化を進めることで経営の適正化が図れることや、そのための手順等の具体的なアドバイスを受けることができました。今年6月に社長が代替わりし、ITに詳しい人材も入社したことから、新社長のもとで新しく生まれ変わろうと決意し、バックオフィスのIT化に着手しました。

*1製品製造のための自社工場を持たない製造業の業態、またはそのメーカーのこと。

*2IT経営簡易診断:中小機構が行っている無料の支援メニュー。専門家との3回の面談を通して、経営課題・業務課題を全体最適の視点から整理・見える化し、IT活用可能性を提案する。
https://www.smrj.go.jp/sme/enhancement/diagnosis/index.html

<導入したITツール>
クラウド型 基幹業務システム「SMILE V 販売スタンダード」を導入

「SMILE V」は、売上・売掛から仕入・買掛、在庫管理までの全般をカバーする基幹業務システムです。弊社は海外に製造発注して製品を輸入するといった貿易実務があり、仕入れはドルで、販売は円で行うなど、国内取引のみの企業と比べると特殊な会計処理が必要でした。IT導入支援事業者は他社ソフトの代理店も兼ねていたため、類似ソフトをいくつか試した上で、弊社が用いている先入先出法*3に対応できる「SMILE V」を選択しました。

社内は日々の仕事のやり方を変えることへの抵抗感が強く、IT導入に否定的な意見がほとんどでした。導入のメリットを理解してもらうため社内で何度も説明会を開催し、業務の効率化による残業コストの削減であれば、「残業を減らすことでワークライフバランスを実現し、残業コストが削減した分を賞与に還元する」というように、会社側のメリットだけでなく従業員目線でのメリットを伝えながら推進を図りました。

導入後の業務も「パソコンより紙に書いたほうが速い」「電卓を叩いたほうが速い」という感覚からのスタートだったため、IT導入支援事業者から専属のサポート担当者を派遣してもらい、従業員に直接操作方法を教えてもらいました。こうした導入サポートにも補助金を活用できたのはありがたかったですね。社内のIT担当者も、小さなことでも質問が来たら必ず答え、面倒がらずに一緒にやることを心がけたことで、少しずつみんなの苦手意識が払拭され、「ITを活用すれば仕事が楽になるのだな」という認識が拡がってきたように思います。

*3棚卸資産の評価や原価計算をする際、先に仕入れた物品から先に払い出されたと仮定する方法。

<効果>
2〜3日かかっていた業務が1日に
残業コストの削減により利益率が1〜2%アップ

まず、生産・仕入れ、販売、在庫の数字が正しく把握できるようになり、経営が適正化しました。IT経営診断で指摘された「ECで受注した送り状が倉庫で出力できない」「ECで受注したデータが販売管理ソフトに取り込めない」「販売データと会計データが連動しない」という課題もすべて解決しています。

クラウド型のソフトなのでリモートワークが可能になり、営業担当者がノートパソコンを持参して客先で見積もりを作成し、商談をまとめられるようになりました。事務作業や営業報告書の作成もすべて出先で可能なため、恒常化していた残業がなくなり、定時で上がれるようになっています。他部門も手入力や手計算の手間が激減し、従来2〜3日かかっていた業務が1日で片付くといった効果が出ています。なにより、コロナ禍で自宅待機を余儀なくされた時期も各部署がリモートワークで滞りなく業務を行うことができ、「これはすごく便利だね」と一気に理解が進みました。

労働環境の改善とともに、残業コストの削減により利益率が1〜2%改善。販売管理費も年間1,000万円ほど削減しています。その分をECの広告費にまわしたことで、スタート時は数百万円程度だったECの売上が昨年度は約8,000万円まで伸長。今年度は1億円を超える見込みです。

<今後の展望>
伸びゆく世界市場を視野に
海外向けECサイトの構築に注力

今後は倉庫の在庫管理に、さらにシステムを活用していきたいと考えています。現在、倉庫管理業務は社内で“スーパーマン”と称されるようなベテラン担当チームの能力に頼っていますが、事業の継続を考えるとスムーズに世代交代できる環境づくりが必要です。製品についてはすでにシステムによる管理が進んでおり、今後は部品の管理を進めます。

また、今後10年を見据えると国内需要は確実に縮小することが予測されます。対して、海外の需要は拡大傾向です。弊社もゆくゆくは海外への販売が8割、国内は2割くらいの比率になるのではないかと考え、海外向けECサイトの構築に力を入れていきます。

BtoBの取引はまとまれば大きいのですが、現地まで商談に出向く必要があるなど負担が大きいのが悩みです。その点、海外向けECサイトは容易に海外の消費者に直接アプローチすることができ、利益率も高いのが魅力です。

現在導入している「SMILE V」は、外貨建て取引にも対応できる海外仕用にバージョンアップすることができるため、来年度に再びIT導入補助金を活用して対応したいと考えています。弊社取引の基軸通貨がドルになる日も近いですね。

<IT化を進めようとする皆さまに一言>
補助金対象のツールやIT支援事業者は
IT導入補助金の公式サイトで探せます

ITツールは、プログラムを走らせれば人間が寝ているときでも仕事をしてくれます。「従業員が休むため」「楽になるため」だと理解されれば、どのセクションでも前向きにIT化の推進に取り組んでもらえるのではないでしょうか。経営者目線から見ると、人手不足が深刻になる中、少人数でも業務がこなせるIT環境の構築は事業継続の要ではないかと思います。

小規模な企業の場合、IT導入補助金を活用したくても事業規模に合ったITツールが見つからなかったり、メーカーの営業が来てくれないといった悩みもあるのではないでしょうか。そのような場合でも、IT導入補助金の公式サイトには多数の補助金対象ツールや企業(IT支援事業者)が登録されていますから、そこから比較検討することができます。弊社も公式サイトを制作する際には、 IT導入補助金サイトで業者を探したんですよ。補助金を活用することで予算も増額できますし、IT支援事業者にも安心して協力してもらえます。IT導入補助金は、中小企業にとってすごく優しい補助金制度だと感じています。

企業概要

会社名 株式会社アズマ
URL

https://www.azuma-kk.co.jp/

住所

埼玉県さいたま市緑区原山3-2-10

従業員数 33名
事業内容 家庭用電気機械器具卸売業、企画、輸入販売
従業員数 33名