ITツールを活用して、職員も園児も
笑顔で集える認定こども園に

社会福祉法人清香会 大胡第3こども園(群馬県前橋市)
IT導入補助金2020 C類型-2

ITツールで現場の悩みを解決し、本来の保育業務を充実。
子どもと保護者が安心でき、職員がやりがいを持って働ける環境づくりを進めている。

<抱えていたお悩み>
職員の労務管理や児童の登降園管理を
効率化したかった

社会福祉法人清香会が運営する大胡第3こども園は、2021年に保育園から移行した幼保連携型認定こども園です。保育業界では、さまざまな業務を紙ベースで行なっている園が多いなか、当園では約20年前からITを導入し、業務の効率化を通して豊かな保育の実現に注力してきました。

しかし、以前より導入しているITツールは労務の機能が手薄で、実情にそぐわなくなってきていました。たとえば、職員の出退勤については管理職が紙のタイムカードの打刻データと出勤簿、休暇申請書類とを突き合わせて確認を行うといった細々した作業が発生し、日々かなりの時間を割いていたのです。

また、園児の登降園時は職員がパソコンで全園児分の打刻を行い、さらに手書きでも記録し、二重チェックを行っていました。所定の降園時間を過ぎると延長保育の料金が発生するのですが、二重チェックをしていても保護者と降園時間の認識相違が発生することがありました。

保護者自身がICカードで打刻し、リアルタイムでシステムに連動できれば認識相違もなくなるのでは?また、より使い勝手の良いITツールで職員の業務を軽減できれば、本来の保育業務や職員育成にもっと時間を使うことができるのではないか。そう思いながらもコスト面で二の足を踏んでいたところ、司法書士から送られてきたメールでIT導入補助金が保育事業でも利用できることを知り、さっそく悩みを解決できるITツールを探し始めました。

<導入したITツール>
保育園・幼稚園向けITツール「キズナコネクト」

導入した「キズナコネクト」は、労務管理、職員シフト管理、児童台帳、登降園管理、保育料管理、お知らせ配信といった業務の効率化を図る、保育園・幼稚園運営に特化したITツールです。データ入力のためのタブレット(iPad)やシステムと連動したカードリーダーもIT導入補助金でレンタルし*、職員と園児全員分のタイムカードもIC化しました。

現在、当園では従来のITツールと「キズナコネクト」を併用し、それぞれの長所を活用するようにしています。契約やパートタイマーを含む職員全員が自ら出退勤管理や休暇申請等を行うため、これまでITツールに触れてこなかった職員が慣れるまでは寄り添って苦手意識を払拭する必要がありましたが、持ち運び可能なタブレットでいつでも簡単に入力できる手軽さから、次第に「疲れている時でも申請がラク」「園児から目を離すことなく入力できて安心」とメリットを感じる声が多くなりました。

ITツールの運用開始前に、IT導入支援事業者(株式会社ネクストビート)が管理職を対象に講習を実施し、あらかじめ必要なデータも登録しておいてくれたため導入もスムーズでした。その後も質問するとすぐに対応してくれ、バージョンアップで使い勝手もどんどん良くなっているので、アフターフォローのしっかりしたIT導入支援事業者を選定することが大事だと思います。
*IT導入補助金2020のC類型では、事前に登録されたハードウェアのレンタルが可能。

<効果>
労務管理の作業時間が7割も軽減!
保育業務に力を注げるようになり、コミュニケーションも活発に

一番の効果は、管理職の労務管理にかける作業時間が7割も軽減されたことです。残業や持ち帰りの仕事がなくなりました。また、登降園時に保護者にICカードで打刻していただくようになったことから登降園時間に係る認識相違もなくなり、職員も毎日大変だった二重チェックをする必要がなくなって喜んでいます。その他、集金袋も廃止して、システムで集計し銀行引き落としができるようになるなど、とても便利に活用しています。

業務の効率化で時間に余裕が生まれ、職員はこれまで以上に教育・保育に力を注げるようになりました。皆、熱意を持って保育の仕事についた人たちばかりですから、子どもたちと接する時間が増えたことで仕事のモチベーションアップにつながっていると感じます。

管理職も園児と接する時間が増え、担任とは違った視点で子どもたちの様子を観察して保護者にお伝えすることができています。給食主任は、専門知識を活かした食育プログラムを手厚く行うことができるようになりました。職員同士のコミュニケーションも活発になり、管理職が職員の相談事に耳を傾け、前向きに “困りごと”を解決している姿が見られます。

<他の補助金活用について>
乳幼児のブレスチェックにITツールを導入
積極的な補助金活用で園児の安全を守る

自治体の補助金を活用し、午睡時のブレスチェック専用のITツールを導入しました。ブレスチェックは乳幼児突然死症候群(SIDS)などを未然に防ぐために行う呼吸確認で、0歳児は5分おきの目視と身体に触れての確認が推奨されています。当園では15人の0歳児に対して5名の職員が一斉に5分おきの確認を行ない、記録もそのつど手入力していたため大変だったのですが、呼吸や寝返りをリアルタイムで感知できる端末を赤ちゃんの衣服と肌の隙間に装着することでITツールと連動した管理が可能になり、5分おきの目視確認が職員1名で対応できるようになり、他の職員は、連絡ノート記載や他の業務を行なったり、休憩に入りやすくなりました。

また、LAN環境の構築と新型コロナウイルス感染症対策のため、非接触で体温を測定するサーモカメラも導入予定です。

<今後の展望>
IT活用で労務の負荷を軽減し、やりがいを持って働ける環境を整えたい

多くの保育教諭は、もっと保育に時間を使いたいという悩みを持っています。今後もIT活用で労務の負荷を軽減し、やりがいを持って働ける環境を整えてあげたい。そのことが良い保育にもつながると感じています。

また、現場の「こうなるといいな」という要望や意見を積極的に業者に伝えることで、より使い勝手の良いシステム開発に貢献したいと考えています。たとえば、備品購入がITツール内でできるようになれば、職員が気づいた時に申請し、管理者が購入手続きを進めることができます。

IT化を通じて働きやすい職場環境を整えることは、優れた人材の確保にもつながります。いま、どの園も園児数が減ってきていますが、保護者の方にご安心いただき、子どもたちが健やかに集える園にしていくには、やはり職員の“質”が重要です。当園は自園のサイトで ITツールを導入した管理体制について明記し、そこで人材募集を行なうことで効果的な採用につなげました。人材教育にもさらに時間をかけていきたいと考えています。

<IT化を進めようとする皆さまに一言>
期待する導入効果を明確にし、適切なツールを取り入れる

私たちは古くて良いものは伝承し、新しくて良いものは熟考し取り入れていきたいと思っています。IT化も、導入することでどのような効果を得たいのかを明確にし、そのためにはどのツールが最適かを、複数の業者に話を聞きながらしっかり検討することが大事です。職員にも、「皆さんの仕事がこんなふうに楽になりますよ」と具体的に発信することでスムーズな導入につながります。

ITが得意ではなくても、若い世代やIT導入支援事業者の力を借りてIT化を進めることは可能です。園長である私も指1本でキーボードを打っていたところからのスタートでした。むしろ苦手な人の気持ちがわかるので、導入後は職員に対して丁寧なサポートができました。

コスト面で困難なことも、補助金を活用すれば職員や園児のためにできることがたくさんあります。まずは管理職が支援機関からの情報に目を通し、さまざまな補助金制度について知ることが大事です。補助金は国民の税金でもあるので、しっかりと取り組みを継続していくことも大事かなと思います。

企業概要

会社名 社会福祉法人清香会
URL

大胡第3こども園
https://ogo3.jp

住所

〒371-0021
群馬県前橋市樋越町701-2(大胡第3こども園の所在地)

従業員数 88名(2022年2月現在) 内30名(大胡第3こども園)
事業内容

保育施設の運営

従業員数 88名(2022年2月現在) 内30名(大胡第3こども園)